2018年 06月 18日
一路真実「親島の鼓動」感想(3) |
話を先に進める前に、誤解を招かないように、補足しておきたい。
昨日 一路真実の作品は「成長物語」であると書いた。テーマだけ取り出すと登場人物の「成長」を扱った小説と言える。それで、成長とは何だろうと、あらためて考えたことを書きつづった。
文芸作品の価値が「何をかいたか」ではなく、それを「どう書いたか」にあることは、言うを待たない。権威に頼って俗情にいたると、この前提はすぐに崩れるけれど。
一路が登場人物たちの成長を書く時に、友との出会い、交友関係、友情の深化と別れ、あるいは家族の愛情を、「成長」との関係で、どう書いたかというところが大切なわけだ。
作品は作者の人柄を反映するものだから、一路の小説の主人公たちはみな優しく、芯は強い。悪人がでてこない小説。にもかかわらず、ドキッとさせる一瞬の性の描写で、人間の原罪性の上に立った優しさであることも知る。
「創星」やティッターを読みこんでいると、ちょっと普通ではない、一路の人間的な側面が読み取れる。
鳩山(竹中)との、友情の深さ。外から見ると運命的な出会いに見える。
責任を抱え込み、いつか周りが分かってくれる。つぶれそうになっても、その一線、人への信頼を決して手放さない。
それはちょっと接しているだけでも、すぐにわかる。鳩山が抜けた後の「創星」を支え続けている、その姿勢。
今はどこの職場でも毎年、上司による面談で評価があったりする。「おまえが偉そうに言うな」という場面も多いのではないかと思うけれど、なんと一路は毎回、上司から「君が好きだ」と言われてたらしい。
「告白かと思ってしまう、語彙の問題なんだけど」と書いていて、これは吹き出す。
私の一路への感情も一言でいえば「君が好きだ」につきる。「えー、もっと付き合ってから言ってよ。それに私もう人妻よ」と言われそうだけど。「いえ、語彙の問題です。それに一路さんがハプニングを厭わない性格らしいということも、知ってます」と、答えよう。
一路の小説の熱烈なファンがいるらしいことを、「ポエイチ」の後の、「親島の鼓動」の感想を読んで知った。作中のちょっとした言葉にもその方は、心を揺さぶられている。感受性が鋭いのだ。
一路の人間性が作品中にほのぼのとたちこめる。おそらくそこに感受性が反応するのだろう。
「何を」「どう書くか」には、作品に反映する作者の人柄までもが含まれる。人間が創りだすものだから、当然なのである。
また小説は構想したとおりに書くだけのものではない。おそらく「親島」を巡って、大地、世界が奏でる鼓動に書かされる、物語の展開に奉仕する自分というものに、いま直面しているのではないかと思う。これは先で考察したい。
以下 次回
by hikari_1954h
| 2018-06-18 16:00
| 星屑書房「創星」