2016年 01月 09日
古代の造形とアニミズム |
むかし「古代シリア文明展」を観にいった。
今、シリアは反アサドのアメリカの介入で内戦状態。難民の流入で EU諸国は窮地に立たされている。石油の利権が欲しいとか、その程度の理由で命を奪われ、国をおわれる人々 。(この記事を書いていた後にロシアによるテロ集団(is,ダーイッシュ)への空爆が開始された。イスラエル、アメリカと共にテロ集団を操っていたトルコとサウジは窮鼠猫を噛む混乱状態。
美術展で見た素朴な焼き物の、動物や生活を写した働く人びとは、どれも稲作による定住と安定して与えられる恵みへの喜びが形になったような、ほっこりとした造形だった。家族と小さな集落の営みが見えるようであった。後にも先にも接することの無い小品たちだった。戦乱の中で多くの作品が失われるのでしょう。
中国、良渚文化から引継ぎ殷、周の時代の青銅器に刻まれた怪物、饕餮(トウテツ)紋や、
時代も地域も遙かに離れていて饕餮と瓜二つの造形。
殺気漂う造形
人びとを怯えさせ力で支配するための造形。人類負の美術遺産と呼びたくなる。饕餮紋にしても、インカの怪物のような神像にしても元々は、荒ブル自然や霊魂への畏怖や、強い動物にあやかりたいと言うような信仰のようなものから生まれでた形なのかもしれないけれど、これらの造形の背後にある殷やアステカ、インカの凄惨な生贄の儀式と別物でない。
生産をつかさどる太陽神への捧げ者とか、世界の終焉から自らの血をもって、新たに人間を生み出した神への感謝と言った、神話に基づくものであっても、殷もアステカも生贄を駆り立てるための戦争を常態とした国家だった。
シリアの古代の人々が作り出した土偶にはおおらかで、つつましい暮らしの感謝が込められていた。それが人工的な制度のもとに創られた形でないことは誰の眼にも明らか。このような造形に現われた作り手の心性を、アニミズムと呼ぶ。
恐怖による支配の道具としての造形は、一見そのプリミティブな形からなにかアニミズムを連想させるものがあっても、制度化された形に過ぎないことを見分けなくてはならない。
アッシリアの宮殿壁面に掘られたレリーフ群は、技術は精緻を極めているが、王の戦場での功績を讃える血生臭い場面か、王のライオン狩りの、これも殺戮の場面ばかりが描かれた。ペルシャ帝国の平和的な文化、美術とは対極にある。
アッシリア・レリーフ
画面左上に敵兵が串刺しになっている
槍を突き刺され嘔吐し瀕死のライオン
アッシリアでの民衆の悲惨な生活が想像される。
アッシリアの美術を見ると、戦火の中の子どもたちの絵に思いは飛ぶ。
兵隊サン ボクラガカイタ絵デス
逓信博物館募集 全国国民学校生徒の前線慰問エハガキから
日本が植民地にしていた国々の子どもたちはもっと厳しい現実を生きていたね。
アメリカがビキニ環礁での水爆の実験成功を祝って、その時のきのこ雲をかたどったケーキにナイフ入れている写真がタイム誌に載った。それを見、憤ったある宣教師が 広島の子どもたちの置かれている状況を訴え、教会で支援物資を集めて贈った。そのお礼として広島、市川小学校の子どもたちが描き送った絵が残されている。2012年里帰り展示され、「広島の校庭から届いた絵」というドキュメント映画が作られた。
まだ廃墟の中で書かれた瑞々しく美しい絵。満開の桜、これは子どもたちの夢と希望です。
実際は窓も扉もない教室で学んでいた子どもたちの描いた絵です。
説明を加えると蛇足になりそうですから、子どもの有するアニミズムがどのような働きをするのか、写真を見比べて思いを致しましょう。
http://hiroshimaschoolyard.net/about-j.html
では今回のテーマ、エーゲ文明を構成したクレタ(ミノス)文明はどのような性質の美術を残したかを見ていきましょう。
以下次回
by hikari_1954h
| 2016-01-09 01:14
| アニミズムから見る美術史