2014年 02月 16日
小詩集「丘と少年」 2 |
日常
溜息と反省ばかりの子育て。
グルルル親父になった外猫が
子を呼ぶ低い声。
ホースのつなげない手間のかかる
全自動洗濯機。
根から刈っても生え続ける雑草。
画材箱のめったに開けない2段目は
彫刻刀 コンパス 木炭。
生活の戦い。
毎週の講義ノート。
毎月の連載原稿。
サソリ座の心臓アルゴンの上方が火星か?
赤くないので確信がもてない7月。
深夜にきしむ家の音。
溜息と反省ばかりの子育て。
月間「ミックス」2006年9月号掲載
(大分合同新聞社刊)
夏から秋へ、三題
田の土手に てんてんと山ゆり
キャンパスの下塗りの白さ
後から冷たくなった秋風が絵の具を
吹き散らして彼岸花
問題;秋風が用いた絵画技法を何と呼ぶか。
虫食いで穴だらけの しその葉
葉脈をのこして食べればいいのに
問題;食べた虫の気持ちになって反論せよ。
回答例;科学の実験で食ってるんじゃねー。
ゆずりあい主張しあって 丸くいがくり
問題;いがぐりに働く物理の法則を述べよ。
「月間ミックス」2006年11月号掲載
詩心
舞う蛍に囲まれていれば詩心が動く
詩心が動くところには 幼い日の記憶が重
なる
寄せては返す波のように光が伝わって行け
ば
私は誘われて星ぼしの間を漂う
子どもの頃 星が大好きだった
(毎日夜空の観察日記を付けていた)
それから虫かごの中で たくさん死なせて
しまった
虫たち
世界は不思議に満ちていた
たくさんの過ちを犯しながら
齢を重ね
今それでも動く詩心があることが
私にとっての救いなのだ
「月間ミックス」2007年7月号掲載
by hikari_1954h
| 2014-02-16 19:21
| 小詩集「丘と少年」